廃屋処理は腐海

【動画】廃墟の村を草がのみ込んだ、不思議な風景
中国・上海沖の小島、放置されたかつての漁村は今

2018.05.02

このリンクの映像を見たら、すぐに思い浮かんだ風景は、1年半前に見た日本のいくつかの場所のものだった。
当時日本に住んでいた息子に田舎の風景を見せたいと思って、友人と親戚を頼んで関東地方と東海地方の二つの県を訪ねた。

どこに行っても山の緑が一方や全方から迫ってくる田園の風景は懐かしかった。
しかし訪れた集落には、どこでも滅びの兆候が見られるのだ。

人が住まなくなってかなり時間がたって、蔦がはびこる古びた家がたくさんある。
軒が崩れて瓦が落ちて、草が生えている屋根がある。

昔は訪れる観光客で賑わっていた温泉旅館が門戸を閉めて年月が経ち、川沿いに並ぶ窓が軒並み壊れた大浴場や、水のない底を晒すプールが、寂しく昔の繁栄を思い出させる。
昔はいつ通りかかっても清閑としていた和風庭園を前庭に持つ旅館に、横付けする観光バスから降りてくる団体客は中国語を喋っていた。

昔は近くの漁村の小型漁船を作ったり修理していた小さな造船所のドックを囲む、錆びた鉄骨やクレーンの脇を歩く。
事務所の入り口には古びて字も読めなくなった紙が貼られて、どこからか水が漏っている音が聞こえている。
二階に上る鉄製の外階段は、上の数段が腐食して崩れ落ちていた。

当時日本に住んでいた息子が、多分お父さんも好きだと思うからと予約してくれた三鷹の森ジブリ美術館へ行った。
屋上にある疑似廃墟のロボット兵を持って行っても、ごく自然に溶け込みそうな中国の廃村風景である。

住む人がいなくなり相続人が不明になった住居や、破産してしまい、これからも決して誰も改装して復業しようとは考えない古い旅館などを解体するには、かなりの費用がかかる。
誰も費用を負担できないのなら、いっそのこと解体をあきらめて、リンク映像の中国の漁村のように植物が覆うのに任せてしまったら良いのでないか。
上海近辺より気候が寒くて植物の力が足りないというのなら、人為的に助けよう。

分解過程を加速したいのなら家屋全体をビニールハウスにして、熱帯のような条件を作ってやって緑化を加速しても良い。

最初にカビやキノコのような菌類に木材などを分解してもらってまず堆肥のようにしてから、緑色植物の出番にする二段階計画でも良い。

植物や菌類の品種改良で、コンクリートやプラスチックを分解できるようにすれば良い。
地上に留めておけば、海洋の微小プラスチック汚染は起きない。

コンクリートやプラスチックの分解能力が強化された菌類や植物が廃屋以外のものに害を与えないように、ある条件のもとで「引き金」が引かれると生存ができなくなるような遺伝子的メカニズムを備えていたら、環境に安全である。
やはり遺伝子操作に頼るのか?

分解したい建物に菌類や微生物や植物の種を蒔いてやってドームで覆い適当に加熱して数年で土に戻るような技術があったら、廃屋や廃村の処理はごく簡単になる。

なんか既視感のあるプランである。
ナウシカの世界の「腐海による環境浄化」そのものではないか?
ジブリは何でもお見通しだ。
ただジブリ映画の滅びは次に来る復活をほのめかしているが、現在の時点で想像しても、人口が復活して廃村が再生するような日本の将来は、今のところ見えてこない。

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Rio Cardを使ったリオ大衆乗り物巡り

前回のブログに紹介したサイトを見ながら、オタクであろうとなかろうと乗り物ならなんでも好きだという人にぴったりの街巡りプランを思いついたので書こう。

あらかじめ注意しておくが私はリオ住民でないから、これら乗り物や通過する地区がこの時間帯に安全かどうかは確認できない。
ホテルのスタッフやリオ住民に情報をもらったり、Google Street Viewなどで街の様子を眺めて行くか行かないかを判断してもらいたい。

率直に言うと、どこを通っても、バスで行ってもタクシーで行っても、100%安全な場所はないと思うが、服装や所持品をふさわしいものにして、行動に気をつけて、心の準備をしていれば、事件に対処できる度合いが十分大きくなるだろう。

朝早いのは、ココター発プラサ・キンゼ行きのフェリー便の最終がこの時間だからである。
多分ゴベルナドール島住民の足と思われるこのフェリー路線は、朝3便、夕夜3便のみ、しかも土日は運休である。
当然当プランは平日のみ有効である。

プランの各交通機関の発着時刻はGoogle Mapsの機能を使って調べたが、サイト自体が断っているようにあくまで参考であるから、特にSuperViaは遅れることで有名らしいし、ここに書いた時間通りに進まない場合があることに注意してほしい。

出発・到着地点はセントラル・ド・ブラジルとしたが、もちろん自分のいる場所を考慮して変更しても良い。
このリオデジャネイロのターミナル駅は映画でしか見たことはないが、行き先を間違えないように、人が多いだろうからひったくりなどに十分注意してもらいたい。

Rio Cardにはある条件を満たすと乗継割引があるのだが、その条件が今ひとつ明らかでないので、下に示す各々の運賃を合計した金額以上をあらかじめチャージしておいて、旅行中は読み取り機にタッチするだけで通過できるようにしておくと良いだろう。

  • 6:34 Central do Brasil駅12番ホーム―
    電車 [SuperVia Ramal Saracuruna支線-Gramacho行き途中7駅停車23分 15分毎 R$4.20]
    →6:57 SuperVia Olaria駅
    BRTオラリア駅まで徒歩2分位
  • 7:10 BRT Olaria駅―
    BRT [Transcarioca BRT42-Fundão行き途中4駅停車終点フンドン駅で乗り換えBRT30-Galeão Tom Jobim 2行き(Google MapsにはAlvorada行きと書いてあるのだが間違いだろう)途中駅無し終点 R$7.20]
    →7:44 BRT Galeão Tom Jobim 2駅
    空港で飛行機を見たいとか値段の高い朝食を取りたいとかいう人は、その分早出(はやで)しなければならない
  • 8:05 Galeão Tom Jobim 2バス停―
    路線バス [924番 Bananal行き途中23停留所停車52分 R$3.60]
    →8:57 Praia da Olariaバス停
    空港を含めて全経路がゴベルナドール島内にある
    マヌエル・バンデイラ公園を横切るとココター駅(港)
  • 9:20 Cocotá駅(港)―
    フェリー [CCR Barcas 航海55分 R$6.10]
    →10:15 Praça XV駅(港)
    これがプラサ・キンゼ行今日の最終便!
    海からのリオの眺めを楽しめるし、リオ・ニテロイ橋の下をくぐる、割安な観光船
  • VLT Praça XV駅―
    VLT [2号線/1号線 R$3.80]
    →(Central, CariocaまたはCinelândia駅)
    プラサ・キンゼに着いたら、すぐにVLTに乗らずにオリンピックのときに再開発された海岸の公園やセントロを散策しても、それから昼食にしてもよいし、メトロとの接続駅Carioca, CinelândiaまたはCentral駅でメトロに乗ってビーチ方面に行ってもホテルに戻っても、好きなように行動できる。
  • (Central, CariocaまたはCinelândia駅)―
    メトロ [1号線/2号線 R$4.30]
    →(行きたいメトロ駅)

本記事の表題が示すように、全ての交通機関はRio Cardにクレジットがあれば、改札機や読み取り機にタッチするだけで運賃支払ができるはずだ。
路線バスとVLTは車内に、その他はフェリーも含めて駅に改札機がある(と思う)。

BRTもVLTもオリンピックのために作られたから、観光客にも使われている。
メトロも問題はない。

電車はリオ市と近郊の都市を結ぶ路線だが、メトロと比較して客のガラが悪く、物売りなどが多く雑然としているそうだから注意。
スマホを出すのがためらわれる環境であることを予想して、下車駅までの途中の駅名を紙切れに書いておくと良いと思う。

めったにないことだが、車両故障などで電車が立ち往生すると、乗客は勝手に線路に降りて歩き出すが、日本風に考えて車両に残っていないで大勢に従うのが良いと思う。
腹を立てて凶暴化したけしからん連中が、電車を打ち壊したり放火したり馬鹿な騒ぎを起こすことがあるかもしれないが、どこにも良識があって親切な人はたくさんいるからそのような人を見つけて一緒に安全なところに避難するように心がけよう。

路線バスは住民の利用第一に運用されているので、旅行者には使いづらいとは思われる。
通過点で下車するのだが、どこで降りるかわからなくなる可能性が多い。
リオのバスはどうか知らないが、普段使う市内路線バスの経験から言うと、車内は路線図もアナウンスも何も案内が全くないし、そもそもバス停に名前などないので、いるならば車掌、いなかったら運転手に、「ココター駅からバルカに乗りたい」と言っておけば止まって教えてくれるから安心できる。
ワールドカップとオリンピックのおかげでどれだけリオが国際都市化したのか想像できないが、乗務員に英語が通じなくても、学生らしい若者や教養がありそうな乗客に話せば助けてくれるだろう。

これで最後のメトロを含めて6種類の乗り物に乗って、空港で飛行機を見ることができたわけだ。
Rio Cardで乗ることのできるもう一つの乗り物であるバンがないだろう、という疑問を持つ人がいるかもしれないが、さすがにロシーニャやヴィジガルのバンを薦めることは避けた。
両方共有名なファヴェラ(スラム街)の名前である。

平日の午前中だから安全な時間帯だと思うが、十分気をつけながら楽しんでほしい。

リオデジャネイロ交通マップ

リオデジャネイロ大都市圏の交通マップに良いものがなかなか見つからない。
Wikipediaでみつけたこれがまあまあだろうか。

長所は地図が正確で位置関係がよく分かる、ポン・ジ・アスーカルのロープウェイとか、コルコヴァード登山鉄道とか、サンタ・テレザ路面電車のような普通観光客がよく使う交通機関だけでなく、新しい観光名物と言われる(行ってみたいのなら軽々しく信じて行かないで、前もって安全性を十分調べてもらいたい)アレマンのファヴェラ(スラム街)にかかるロープウェイなどマイナーなのが一緒にのっていることだ。

マイナー過ぎる、コンドミニアムの(私設の?)ケーブルカーのようなものまでのっているが、このような情報に需要があるのかわからない。

欠点はメトロやBRT、VLTの路線や運行系統の区別がわかりにくいことと、図面の日付が2018年1月でありながら、2016年のオリンピックに開通が間に合ったメトロ4号線が建設中となっていたりと、更新が追いついていないことだろう。
二つの路線が近接する駅で乗り換えが可能かどうかも地図からはよくわからない。

  • BRT-急行停車駅・他の交通への乗換駅の情報あり-運賃R$3.60
  • メトロ・リオ-各駅案内リンクあり-運賃R$4.30
  • VLTカリオカ-他の路線、他の交通への乗換情報と観光地図あり-運賃R$3.80
  • SuperVia電車-他の路線、他の交通への乗換情報あり-運賃R$4.20
  • CCRフェリー-時刻表

の路線図を併用したら良いだろう。

いつも使っているよと言う人も多いだろうGoogle Mapsは、鉄道駅だけでなくバス停留所の情報(どこに何番の系統が止まるか)が地図上にマップされているので、これも非常に役立つだろう。

Rio Cardを使ってみる

息子がリオデジャネイロに旅行した。
正確に言うとリオデジャネイロ市とグアナバラ湾を挟んで向かい合うニテロイ市に用があったので、リオからどうやって向こう岸に渡ろうかと思案したのであった。

1か月以上前に計画的に購入していれば、レイト(leito=寝台)というフルリクライニングワイドシートのバスより少し高いくらいの値段で航空券が買えてリオまで行けたのだが、うかうかして値段が2倍も3倍にもなったので、結局バスで行った。

長距離バスはリオデジャネイロ市のノーヴォ・リオ・バスターミナル(Rodoviária Novo Rio)に到着する。
在リオデジャネイロ日本国総領事館発行の2017年11月「安全の手引き」を見ると、「長距離バスターミナル周辺は治安が劣悪」と書いてある。
到着予定は土曜日午前9時半、危ない時間帯ではない。
リオ・ニテロイ橋を通る都市間路線バスを使う方法と、オリンピック2016年リオ大会に合わせて建設されたVLTと、昔からある渡し船バルカ(barca)を乗り継ぐか、である。

「安全の手引き」によるとこれまた避けたいと評価されるが、いっぺん乗れば乗り換えのない路線バスで、延長13キロ、片道4車線の堂々たるリオ・ニテロイ橋でグアナバラ湾を渡るのもいいけれど(橋上で強盗事件は皆無ではないのだが)、リオの町に用はなくても、せっかく来たのだからVLTで再開発されたセントロを観ながら船着き場まで行きフェリーで行ったほうが観光らしくなる。

経路は次の通り

  • ロドヴィアリア(Rodoviária)-[VLT2号線 R$3.80]→プラサ・キンゼ(Praça XV-終点)
  • プラサ・キンゼ-[バルカ・アラリボイア線 R$6.10]→プラサ・アラリボイア(Praça Arariboia-ニテロイ市)

VLTとは英語のLRV (Light Rail Vehicle)のポルトガル語(Veículo Leve sobre Trilhos)であり、そのままアルファベット読みしてヴェーエリテーと言われている。
オリンピックのためのリオ市セントロ再開発の目玉の一つである。

インターネットの情報により、あらかじめVLTの乗り方を「予習」していおいた。
Google Mapsでは乗り場の地点がわかるが、これ丸呑みも避けたいところである。
乗り場や乗り方がわからなくてウロウロするには危険な場所である。
この新しい乗り物は、十分な小銭を持って乗れば良いバスや、乗る前に駅で切符を買えば良い電車やメトロとは乗り方が少し異なる。

  • まずリオデジャネイロ大都市圏で有効なRioCardという「Suicaのリオ版」を入手する必要がある。
    車内での支払いはできない。
  • VLT乗車場の近くにある(らしい)カード発券・チャージ機(Máquina de autoatendimento)で、カード発券保証金(カードを返納すると返金される)R$3.00と当面の運賃クレジットを現金かデビットカードで購入する。
    今回はVLTのあとでリオ・ニテロイ間フェリーに乗るのでその分も含めて全部払える金額をチャージする。
  • 到着したVLTドアのボタンを押して開けて乗車する。
    寒冷地の電車みたいである。
    冷房の冷気を逃さないためだろう。
  • 乗客は自発的に車内のカード処理機にタッチして運賃支払を完了する。

ガイドを見て不思議に思ったのは、乗客が責任を持って自律的にカード有効化という部分である。
皆ごまかそうとせずに正直に行なうのだろうか?
ここはブラジルだよ?
旅から戻った息子に聞いたら疑問は解けた。
フィスカル(検札員)がたくさん乗っているというのだ。
そんなに一編成に何人も検札員が乗っていたら人件費はどうなるのだ?
まあいい。

さてRioCardである。
カードの右側に利用できる交通機関の図解、アイコンが6つあるのだが、これがよくわからない。
RioCardのサイトにあるビデオを見たら、昔のカードは交通機関が5つだった。
バス、電車、メトロ、フェリーと最後の一つが少し謎のバン(van)と説明してくれた。
バンはバン型車両である。
ブラジルでバン型乗用車と行ったら乗客15人乗りの車両を指し、これはコミュニティバスのことだと思う。
新しいカードにはこれにVLTが加わって6つになった。
上から

  1. バス/BRT
  2. メトロ(架線なし、レール、トンネル)- Metrô Rio
  3. 電車(架線あり、レール、オープン)- SuperVia – Trens Urbanos
  4. フェリー – CCR Barcas
  5. VLT(細身、レール、架線なし)- VLT Carioca
  6. バン(バックミラーが車体全体比でバスより大きいから)

であろう。

VLTと同じくリオ・オリンピックを利用して作られたBRT (Bus Rapid Transit)もあるが、これは専用の連節バスが専用レーンを走るもので、VLTと違ってレーンから外れた場所でも行けるバスであるから、普通のバスの仲間なのだろう。

カードの特徴は、ここには書かないがルールに従ってこれらの交通機関を乗り継ぎをする場合に割引運賃が適用されることがある。

それにしてもである。
日本だったらSuicaでもPasmoでもその他の地方のものでも交通系ICカードが一枚あれば国内大抵の場所で使えて、ついでに買い物までできるのだが、ブラジルでは都市ごとに分かれているのはどうにもならないのだろうか?

自己回答すれば、各都市の交通事業体は独立していて横の関係は全く無いので、きっと無理だろう。
わが町にもここ専用で他所では全く利用できないICカードがある。

サンパウロに行く用事があったときにはバスとメトロに何回も乗れる24h割引を利用するために、旅行前にインターネット登録をしてサンパウロのBilhete Único記名カードを作った。
こいつは役に立った。

ゴイアニアではインターネットにあまり情報がなくてカードを作らなかったので、乗り込んだ現金を受け取らない(!)バスが、現金受取りができる市内各地に散在するバスターミナルのどれかに着いて支払いを行うまで車内のカード処理機を通過できず、狭いスペースに押し込められた。

そして今回はリオデジャネイロである。
RioCardというのが手に入った。
割引をフルに利用するためには記名カードにする必要があるが、今回は無記名式カードである。

この分では10都市を訪問する人は10枚の交通カードを作らなければならないようだ。

ルラ被告vs裁判官

4回に分けて書こうとした、ルラ元大統領の収監であるが、5回に伸びた最終回である。
あえてここで幻となる可能性の多いルラ大統領候補に個人的期待する理由を書いてみよう。

ルラ元大統領は検察と裁判所を目の敵にする。
本心はともかく、演説ではそう言っている。

議員は選挙第一である。
何もかも選挙至上であるから、その資金集めにはことのほか熱心になる。
汚職にまみれやすい。
選挙に落ちたらただの人どころか、借金を抱えたらただの人以下になる。
それでも落ちた人を救う互助会のような仕組みが政党にはあるようだ。
政治家になるのに必要な素質は何か。
学歴や試験ではない。
政党への貢献と党内外の人望と、演説術や説得術のような選挙能力と、献金を集める集金力だろうか。
ブラジルの立法府の最高の地位は上下院議長である。
下院議長 Rodrigo Maia、上院議長 Eunício Oliveira

大統領は権力と注目が集中するが、これも選挙次第なので議員と似たようなものだ。
行政の実行者である公務員はどうか。
立法府と司法府にも行政府よりずっと数は少ないが、公務員がいて、待遇は行政府より良いようだ。
キャリアの公務員になるには公務員試験があって、職種によって特定の学位が求められ、競争はきわめて激しい。
なるのは難しいが、一度なったらよほどのことがない限り首にならない。
日本とは違う意味でのノンキャリア公務員は、政治任命であって、試験に受かる必要はないが、政権党に功績があって党に尽くすことが求められる。
これがまた汚職の種になったりする。
選挙で負けたなどの理由で所属党が政権から離れたら、当然すぐクビになる。
行政府の長はもちろん共和国大統領である。
共和国大統領 Michel Temer

司法府である。
判事という職業の、この権力の一員になるのは、多分一番困難だろう。
法学を修めなければならないが、法学出身者である弁護士は無数にいるのだが、裁判官任用試験は普通の公務員試験よりずっと難しそうだ。
公務員の中でも無数の法律と判例を頭に叩き込む職業的知識と倫理を一番要求される職種であり、その職務行使を保証するために最も強力な身分保障が与えられ、汚職防止のためだろうか、給料も良い。
判事をやめさせることができるのは、現行犯のような犯罪の場合を除けば、同じ判事から構成される司法評議会の審査だけだったと思う。
ブラジルならではだが、判決の逆恨みから自衛しろと言うのだろうか、使うか使わないかはともかく武器の携帯まで認められている。
司法府の最高位は連邦最高裁判所長官である。
最高裁判所長官 Cármen Lúcia

職業上の法律判断の厳しさは当然良いこととして、対外的には慎重で誠実そうな印象を与える判事という職業であるが、仲間意識は相当強烈である。
かなり前になるが、パラナ州のある新聞が判事の高給を批判して記事にしたことがあったが、州内の判事が次々に新聞や記者を名誉毀損か何かで訴える嫌がらせに出て、記者はあちこちの町の裁判所に出廷させられて仕事にならなかった、という判事の復讐の話を聞いたことがある。

判事とはそんな人種であるから、社会保障改革で公務員の特権に手を付けるようなことになると、一番反抗しそうな厄介な存在になると思う。
法律を盾に取ることが得意技であるから、既得権利の剥奪など至難の業だ。
法律を改正する権限は立法府だが、合憲性裁判によって無効にされる恐れもある。
そこで憲法改正であるが、議会の三分の二の賛成が必要である。
議会がまとまらなければできない。
だからこの特権階級に正面から闘っていける存在として、議会をまとめることができたならという条件は付くが、司法に恨みつらみのあるルラ元大統領がもってこいである。

労働者党は、ルラが超カリスマを持っている分、大統領候補になりうる他の人材が見当たらない。
ジルマ前大統領も悪くはなかったけれど、党内掌握は今ひとつだったし、現党首のGleisi Hoffmann上院議員は容姿はいいのだけど頼りなさげな上に、この人も起訴された被告である。
エースに頼って優勝したが、若手育成を怠って沈んでいくチームのようだ。
労働者党の候補者不在は、右派中道で候補者がひしめく状態と全く対照的である。
現実に労働者党は、ルラが立候補できないときのBプランを、少なくとも表向きに示さず、格子の向こうにいて家族と弁護士としか面会が許されないルラをなんとしても候補者に担ぎたい。

先週の土曜日に連邦警察に収監されるため赴く前に、自分の原点の場所サンパウロ大都市圏ABC金属労組本部で行った最後の演説は、「昔の労組リーダーだった頃のルラ」を彷彿とさせるようで、かなり強い口調で自分を起訴した検察や自分を有罪にして人身保護も認めなかった裁判所を非難した。
40分位あったという演説を全部聞いたわけではないが、印象に残る格好良い言葉を発した。
「私は今生身の人間ではなく、イデアである」。

というわけで、ルラが立候補できて社会保障改革で公務員勢力と戦わねばならないと観念したら、非常に面白い展開になると期待している。
でも、やはりその不都合な未来を予見した判事たちは何としてもルラを牢屋に留めておいて、被選挙権を断固として認めない手に出るんだろうなと予想する。

名大統領になりそこねた囚人

ブラジル大統領の系譜を現在のTemerテメル大統領から三代遡ると、34代Fernando Henrique Cardoso、通称FHC [1995-2002 2期8年]、35代がLuiz Inácio Lula da Silva、通称ルラ[2003-2010 2期8年]、そして36代Dilma Rousseff、通称ジルマ[2011-2016年8月 1期と20か月]である。

この3代の大統領を比較すると、いつも感じることだった。

FHCが宴の準備を整えて、
ルラが宴会を楽しんで、
ジルマが片付けをさせられる。

経済政策も労働党の統制も手に余る苦境だったと思うが、良い政策もあった、気の毒なジルマさん。

FHCの功績はそれまでの何代もの大統領がなし得なかった、インフレ撲滅という大仕事を成し遂げたことである。
経済が安定したから、資産防衛や財テクではなく本業に専念できるようになって、各産業の本当の繁栄を期待できるようになった。
税収が上がって政策の選択肢が増える。

ルラが大統領に就任したときは、このように経済の基盤は前任者がきちんと整備しておいてくれて、その果実を味わうだけでよかった。
市中金利こそ高かったもののインフレも落ち着いて、国自体の信用が高まると外国からの投資は増大して、中国は鉱物資源や農産物を主とするブラジルの輸出を牽引してくれて、国内の企業は潤って労働者の給料も上がって、景気が極めて良かった。
社会保障会計の急激な悪化の問題はまだ顕在化する直前であった。

経済の内外状況が良かったから、財源を心配すること無く、悪く言えばバラマキ、よく評価すると所得再分配政策を行ったので、特にそれを受け取る民衆での大統領人気は高かったし、現在も高い。

外交にも困難な問題はなく、ルラ大統領がG20のような会議で外遊に出ると、支持率の高さをオバマ大統領はじめ他国の大統領や首相から羨ましがられる、彼にとっては楽しい訪問であったことだろう。
国内外に問題を抱えていたのだったら、記者会見で突っ込まれたときの言い訳をいつも考え続けなければならない苦しい旅行で、息抜きなどできなかっただろう。

ルラが大統領になったらどんなに社会が変動するのかと懐疑の目でみていた中流階級も、好調な経済を目にして、ルラも心配するどころでなくなかなか良くやるじゃないか、と考えを変えた。
もっとも、経済がうまく回っているときは、財務大臣が誰でどんな政策をとっても、文句を言う社会層はごく少なく、誰が大統領をやっても、楽な政権運営だった。

その上に、これまで反政府運動に精を出してきた労働組合や土地なし・家なし運動のような農地・社会改革推進勢力は味方であるから、仕事は楽をしながら、高い人気を保つことが可能だったこの時代に大統領を奉職できたルラは、条件に恵まれた幸せな大統領であった。

だからこそ問うのだが、何をやるにも抵抗が少ない頂点の時期に、将来起きうる問題の解決に手を付けなかったのだろうか。
社会保障改革、政治改革、税制改革である。

ブラジルも世界の趨勢に遅れず、少子化と人口の老年化が進んできて、ブラジル人の寿命が今よりずっと短かった時代の古い年金制度を続ける限り、破綻は時間の問題である。
日本も官尊民卑のようであるが、ブラジルは特に公務員と私企業や自営業のような民間の年金制度の待遇の差が大きく、詳しい数字は上げないが民間と比べて少数の公務員年金会計はその構成員数に比較して相対的な赤字が莫大である。

人気のない社会保障改革を行うためには、まず民間と比較して公務員の年金制度が持つ特権を全部なくして金食い体質を正して、公共と民間の差を完全に埋めてから初めて民間に手を付けるようにして、社会の不公平をなくすことから手をつけたいと、道筋を国民に説明して理解してもらうようにすれば、当の公務員を除けば民間部門からの抵抗は皆無に近くなるのではないか。
ブラジルの雇用全体に占める公務員の割合は12.1%で、OECD平均の21.3%よりかなり低い(2013年)。
民間が結束すれば公務員のわがままは押さえられそうだと思うのだが、そうもいかないようだ。

どの国でもたいてい公務員の労働組合は団結力が強い。
ルラの支持基盤の柱の労働組合の中でも、公務員の労働組合は勢力を占める。
政府の手足である公務員を敵に回したら行政の何もかもが回らなくなる。
だからルラにとって、公務員労働組合を労働組合連合体から切り離して、労組の世界内部で対立を煽るような政策にはとても踏み込めず、将来を見据えたブラジルを救う大改革に踏み込む先見と決意がみられなかった。

一見、右派は資本家とズブズブだから金にまみれて汚く、左派は労働者の清い力に支えられるからクリーンだと前世紀に引きずられたイメージがあるのだが、そうでないことは労働党政府を見れば一目瞭然で、結局労働党もこれまでの政府と同様に賄賂献金大歓迎であった。
当選したらまずするのは相も変わらず同じこと。

ブラジルで「右派は右手で盗む、左派は左手で盗む、中道は両手で盗む」と言われている戯れ言は本当であることを証明してくれた労働党政権であった。

赤信号皆で渡れば青信号

これまで何十人も企業の責任者と政治家が起訴されたり有罪判決を受けたりしているのだが、企業家は司法取引で贈賄の罪を認めても、収賄の罪を認める政治家は一人もいない。

なぜブラジルの政治家は潔くないのか?
国民性とか政治家の資質とかの主観的な見方から離れて説明を試みる。

贈賄側と収賄側の非対称性がある。
贈賄する側は明言、暗示の違いはあるかもしれないが、政府資金入手や優遇税制や入札指名や許認可などの政治的便宜を求めて、政治献金をする。
何らかの見返りを求めて、意図と作為がはっきりしているから、言い逃れしにくい。

一方収賄側は、選挙のために献金を受け入れていると言う建前を貫けば十分で、献金を受け取っても便宜を図ったわけでないから全く悪くないと言い張ることが可能だ。

政治献金は選挙裁判所(選挙管理委員会に相当)に届けて政治資金の会計に異常がないと承認されれば合法である。
この「選挙裁判所に届け出て承認された」というのをどの政党も政治家も錦の御旗として、「わが党が受け取ったすべての献金は選挙裁判所によって承認されている」点を強調して、「司法取引を受け入れた贈賄者の自供は罰を軽減して欲しさの作り話」、とか「政敵による汚い政治的迫害の捏造」とか言い張る根拠としている。
金を受け取ったのは確かだが、ちゃんと申告して承認されているではないか、という言い分である。

要するに受け取った金は、自分個人が私腹を肥やすためでなくて、自分の所属政党がブラジルを良くするためには選挙に勝たなければ、そのための清い資金だ、と考える。

資金集めにはいろいろな苦労はつきものだから、頑張ってこれだけの金を一人で手に入れた自分は1割(2割、3割かもしれないが)ぐらいの褒美をもらえる価値は、党も認めてくれるだろう。
どの政党もどの候補者も皆やっていることでないか。
これは赤信号ではないぞ、皆やっていることだから青信号と一緒だぞ。

確かに出処の不審な金も一旦洗浄されれば、危ないとか安全とか色はついていないから、自分や家族の贅沢に使ってしまっても、選挙資金になったとしても、入っている財布が同じだったら区別するのは難しい。

名義を借りてペーパーカンパニーを作って、その会社に選挙マーケティングやコンサルタントや法律顧問をやってもらう形にすれば金の行く先も怪しまれない。

献金された選挙運動資金のうまみは実際のところ、仮に百万の献金を受け取ったら、90万は選挙運動に使うが、10万は自分の懐に入れてしまっても外部からは追跡できない、という点であると思う。
莫大な金額が献金されるから、一部をくすねるだけでも全く苦労せずに大層な金額を手にすることができる。

しかしさすがに資金が国境を超えてタックスヘイブンの口座にあるのはまずいのではないか。
不審な国外口座からのブラジル国庫への資金返還repatriaçãoのニュースはかなり多い。

選挙に金がかかる、これは事実である。
政党の右も左も区別ない。
だから政敵が起訴され有罪になったといっても、うかつに喜んでばかりはいられない。
都合のいいところで自分の足元に火が回らないうちに、捜査の対象を広げるのは止めにして、このあたりで幕を引いてもらいたいと、どの政党も考えることであろう。

大して重大な責任問題もないのに立法府によって罷免された、ルラ元大統領の秘蔵っ子、不運が重なった前ジルマ大統領の副大統領で、昇格して大統領になったテメル現大統領の立場がまさにその通りだろう。
労働者党シンパがクーデターで政権をとったと誹謗する事件であった。
実際にテメル大統領のMDB(ついこの前までPMDB)は昨年中頃定年になるRodrigo Janot検事総長の後任にRaquel Dodge氏を指名して、その恩で捜査の手を緩めさせようとしたと思われるのだが、ラケル検事総長は予想外に職務に頑張っていて、テメル大統領の友人たちを捜査しているので、MDBは苦り切っていることと思う。

だからどの政党が政権を取ることになっても自分たちの懐具合に直接影響することだから、本当は誰も本気で取り組みたくない。
現在の政治献金の制度が続いていくのなら、贈賄側ばかり有罪になるのに収賄側が逃げ切れるという事態は全く改善されない。

どうすれば断ち切れるか、素人なりに考える。

  • 選挙運動をテレビ・ラジオの選挙公報プログラムだけに限り、公費で賄う。
  • 選挙運動で金がかかる行為を禁止する。
  • 政治献金を禁止して選挙運動費を全部政府が政党に交付してそれだけで賄う。
    この考え方は政治改革案で選挙基金として提案されている。
  • 政治献金を禁止したくないのなら、企業や個人の献金を一つの基金に集中して行い、それから各政党に分配する。
  • これまでのような政党や候補者に宛てた政治献金を続けたいのなら、政党や候補者の特別なガラス張りの口座を立法制度化する。

誰が改革を行うのか?
行政府でも司法府でもなく、当然立法府である。
現在の「赤信号皆で渡れば青信号」をどの政党も続けたいと思っているのならいつまで経っても実現しない。

今年の10月は選挙であるが、牢屋に入ったルラ元大統領が投票意向調査で1位になるようなので、獄中から立候補できるのか、そうしたら中道右派は統一候補を出せるか、あるいは二次(決戦)投票で団結できるか、現政権の思惑通りに獄中で潰されるか、これからどうなっていくかが見ものである。