ブラジル人も心配するリオ五輪

調査機関 IBOPE が実施した、自国開催二大スポーツ大会についてのブラジル人の意識調査を、新聞 O Estado de S. Paulo が発表した。
ワールドカップ・2014年ブラジル大会とオリンピック・2016年リオデジャネイロ大会を比較している。

大会で何が重要か
2014 WC 51% ブラジル優勝
24% 大会の運営
25% 回答なし
2016 OG 59% 大会の運営
31% ブラジルの成績
10% 回答なし
利益・損失どちらの結果となるか
2014 WC 43% 利益
40% 損失
17% 回答なし
2016 OG 60% 損失
32% 利益
*8% 回答なし

これを見たらわかるように、ブラジル人も大会の運営がうまくいくかどうか心配しているし、オリンピックとは、土建屋と癒着する政治家だけが儲かる、壮大な無駄遣いではないかと気づいているのである。

ワールドカップはいわば、ブラジルでは一年中やっているフットボール大会の総集編のようなものだから、「慣れている」とはいえるだろう。
反面、オリンピックは新しいことばかりであり、多少の不都合があっても仕方がないと思っているようである。

昨日のニュースでは、アトランタでは情報系が最初滅茶苦茶だったとか、アテネは工事が遅れていて開催が危ぶまれたとか、北京は大気汚染が酷かったとか、言い訳めいたことを言っていたが、リオは下手したらこれら全てが、大気汚染の代わりには水質汚染であるが、起きかねないところが、まあ心配ではある。
大会8日前の今までのところ自力でやってきて、投げ出したりIOCや他の国に泣きついたりとかはしていないから、しっかり気を入れてほしいものである。

ブラジル大都市、市内バスでナビ使用の注意

サンパウロ市に用事があって、夜行バスで行って、その夜の夜行バスで帰って来るという忙しい旅をした。

用事は昼前に終わり、午後はこれまで行ったことのない、イピランガの独立記念公園に行こうと思った。
歴史をみると、連合王国への大陸封鎖を巡りフランスと意見の相違があったポルトガル王室はその軍事的圧力に耐えかね、王室をブラジルに移した。
情勢が改善してポルトガル帰還に伴い、ブラジルをもとの植民地の待遇に降下しようとしたポルトガル勢力に反抗した皇太子摂政ドン・ペドロが、1822年9月7日に「独立か死か」と、イピランガ川のほとりで叫んで決起した場所である。

まだ鉄道網の密度が薄いサンパウロ市で、イピランガはその網目の中の空隙部にある。駅から2キロくらいだから歩いても大したことはないのだが、市内バスで行ってみよう、そのために鉄道・バス一日券をビリェテ・ウニコ(Bilhete Único)と呼ぶICカードにチャージしたのだから。
24時間メトロ・近郊電車と市内バス(近郊市外バスは含まない)乗り放題は16レアル、メトロ・近郊電車だけだったら10レアルである。
一回券はメトロもバスも3.80レアルであることを考慮すると、一日券は割安である。

日本のように路線図とか時刻表はおろか、止まるバスの系統番号すら表示されていないことのあるバス停を探して、多数の複雑な路線を持つ市内バス網から目的のバスをつかまえて、全く知らない土地を訪問するため、乗換ナビゲーターに頼るにあたり、既に入っていたGoogle Mapsを使ってみることにした。

目的地は独立公園の南側の街路、出発地は現在位置で探索して、メトロ駅まで行った。
そこからナビの示す系統番号のバスを見つけて乗ったのだが、左折するはずの角を直進して高架橋を渡り右にカーブして全く反対のほうへ走ってゆく。
話が違うでないか。
一日券を買ったのだからここで降りて元の場所に戻ったほうがよい、と判断して、乗ったばかりのバスから降りた。

降りる前にはナビ画面を見ていたので気付かなかったのだが、辺りの光景が全く変わっている。
バス通りはブラジルにしては狭く、歩道の幅も狭い。
道の片側には、主に二階建てで下は小さい商店になっているのだが、家々の壁は一様にレンガがむき出しでモルタルが張られていない。
片側は掘建て小屋といってよいような、奥行きのない雑然とした平屋の商店や食べ物屋で、その向こうには二階建てで平べったく全く同じ形の建物が何棟も何列も続く公営住宅である。
かなりファヴェラ(貧民地区)の風景に近い。
昔ファヴェラだったのが脱皮して少しマシになったのであろう。
これはかなり用心して歩かなければならないぞ、と思いながら、それでも人通りは多いのでまずまず安心して、スマホで現在位置を確かめながら高架橋を渡って見慣れた普通の光景の場所に戻ったのだった。

そして今度は正しいバスに乗れるように、メトロ駅前の通りの角を左折した次の停留所で待つことにした。
やっと来たバスの車掌は、先に間違えて乗ったバスと同じ車掌であった。
乗り間違えたバスはその後終点まで行って、折り返しの逆向きの便となっていたのだった。

乗ってからも小さな問題があった。
カードを読み取り機にかざすと、残高ゼロと表示されてカトラカ(catraca)と呼ばれる回転柵が回らない。
詳しく確認していないが、一日乗車券には30分縛りルールがあって、その間には同じ路線を使えないという話を聞いたことがある。
最初に乗車した時のことを覚えていて、「あんたは今乗ったばかりだからね」と言った車掌は、回転柵の手前側に座らせて、手前側から下車させてくれた。
ブラジルの市内バスでワンマンというのを見たことがない。
車掌というのは便利な存在で、行く先を言って頼めば、近い停留所でバスを止めておろしてくれる。
しかし今日はGoogle Mapsナビ機能のテストである。
車掌さんには頼らないことにした。

二百年の昔、清流であったはずのイピランガ川は、コンクリート壁の狭間の、汚い水の流れる浅い水路であることが分かった。

旅行が終わってから家で、問題のバス路線を検索してみた。
メトロ駅を中にはさんで北西から南東に伸びる路線である。
乗って間違いと気づいてすぐに降りたバスはファヴェラめいた通りを上り、その丘の向こうにある大病院が終点となっていて、折り返して再びメトロ駅の前を通るのだが、一方通行なので行き路線と帰り路線が重複して同じ方向に向かってくるようになっていたのだ。
事実を知れば何のことはない。

バスの前面上部の行先表示はドットLED画面切り替えで、系統番号、行先、経由地が2,3秒ごとに切り替わるようになっている。
行先が全く反対の行き路線と帰り路線が、まさか同じ通りを同じ方向に走るわけがないという先入観にとらわれて、系統番号だけ確かめれば十分だと思っていたのがいけなかった。
走ってくるバスの、切り替わりながら現れる系統番号と行く先を両方とも確かめていれば間違うことはなかったのだ。

ブラジルの大都市でファヴェラが、普通な地区や高級住宅街と隣あわせになっているところがよくみられる。
残念ながら地図を見て、記号がついていてここはファヴェラだとすぐに識別できるようにはできていない。
第一、地図会社やGoogleがここはファヴェラであると、勝手に地図に赤斜線などを入れると問題が大きく、実際上無理な話である。
それができるのは市役所だけだろうが、それにしてもファヴェラと判定する基準を作るのには相当な困難が予想されるのである。
誰だって自分の住む地区がファヴェラと判定されて地図に載ってしまうと、きっと地価暴落で損害を負い込むことになるだろうから、市役所でもそんな仕事をやって恨みを買うことになるのは避けたいだろう。
こういった荒っぽい地区は、組織の者かどうかにかかわらず怒った住民が路線バスを止めて乗客を降ろしてバスに火を放つことがあるから、バス利用者としては十分な注意が必要である。

後からGoogle Mapsで見て一つ納得したことがある。
地図にズームをかけていくと建物の輪郭線が現れるまでに拡大される。
そうしたら建物の大きさと隣との距離をよく観察すると、そこがファヴェラかどうかが推察できる。
当然建物が小さく隣家と軒が接触するように密集して間に空きスペースがないような地域はファヴェラである可能性が高い。
そうなったら地図を写真に切り替えて確認することができる。

Google Maps自体はよくできていて、バス停の位置がずれているようなことはなかったが、アルファベットがついて区別されるメトロのどの出口から出たらよいかまでは示してくれなかった。
駅構内にある近隣地図で出口を確かめるとよい。

使い方のコツと私が経験したような注意を踏まえれば、使えるモノであることが分かった。
使い慣れてしまったら、地図を自分で調べたり人に道を尋ねたりするような、昔は旅人に必須だった能力が退化するのではないかと心配になった。