日伯ストーカー事件、相似と相違

日本ではアイドルが待ち伏せストーカーにナイフで二十数か所刺されて重体、という事件が起きた。
たまたまブラジルでも最近同様な事件が起きている。
2016年5月21日の土曜日のことであった。

まず両事件の似ている点から、

  • 被害者のアイドル性
    日本―大学生アイドル20歳
    Brasil―モデル・司会者35歳、興味ある人は”Ana Hickmann”を検索
  • 加害者
    日本―27歳男性
    Brasil―30歳男性
  • 加害者は遠征した
    日本―「当日、彼女と会うために京都から新幹線で出てきた」京都から東京へ456㎞
    Brasil―ジュイス・デ・フォーラからベロ・オリゾンテへ257㎞
  • 加害者は待ち伏せした
    日本―駅で2、3時間待っていた
    Brasil―前日から同じホテルに泊まっていた
  • SNSの存在
    日本―Twitterなど
    Brasil―Instagram/Facebookなど
  • ストーカーの活動
    日本―プレゼントを贈る、SNSに執拗な書き込みをしてブロックされる
    Brasil―SNSに求愛としつこい書き込みをしてブロックされる

似ているのはここまで、相違点というと、

  • 使われた武器
    日本―ナイフ
    Brasil―銃
  • アイドルの被害
    日本―意識不明重体
    Brasil―負傷なし、ただし隣にいたマネージャーが重傷
  • ストーカーの運命
    日本―逮捕されたが無傷
    Brasil―死亡

最大の相違点はストーカーの運命である。
日本で起きた事件の詳細はここで述べず、ブラジルの事件のみ話す。

アイドルはマネージャーと一緒にイベントに備えて、ミナス・ジェライス州都ベロ・オリゾンテのホテルの一室にいた。
ストーカーは部屋のすぐ外にいたマネージャーの夫でアイドルの義理兄弟(夫の兄弟)にあたる男をピストルで脅して部屋に通させた。
部屋に入りアイドルを認めたストーカーは、「何で俺に冷たくするのか」と銃を突きつけながら責め始め、アイドルは気を失い、隣に座っていたマネージャーにもたれかかるように倒れた。
ストーカーは射撃を始めたので、マネージャーの夫は止めようとして二人はもみ合いになった。
マネージャーは腕と腹部に被弾して負傷した。
マネージャーの夫はストーカーの武器を取り上げることに成功して反撃に転じた。
意識を取り戻したアイドルは格闘する男たちから、室外に逃れ助けを求めた。

結局どれだけ人的被害があったか。
マネージャーは意識はあるものの腹部重傷で集中治療を受けており、頭部に反撃弾を受けたストーカーは死亡した。

警察は捜査をしているが、マネージャーの夫は正当防衛が認められそうである。
もっとも、加害者死亡のため、被害者側の証言しか残っていない。

銃のあるなしと、被害者が一人だったかどうかが運命を分けたといえよう。

ブラックバードの仲間たち

以前ブラックバードについては疑問があって、それは一応解決したものと思っていたのだが、新たな疑問が急に湧いてきた。

愛鳥週間あるいはバードウィークを記念して、
OTTAVA(オッターヴァ)
では、最近鳥にまつわる曲が非常に多くかかっていた。
クラシック音楽には鳥が取り上げられる曲が結構たくさんある。

民族音楽と自然とクロスする領域のプレゼンター、ゲレン大嶋さんの日に、曲目twitterで、次の流れを見つけた。

  • #ottava Now on air:ヴィラ=ロボス:黒鳥の歌
  • #ottava Now on air:ペルナンブーコ:黒鳥

ここで非常に考え込んでしまった。
ゲレンさんは両方とも、「コクチョウ」と発音された。
ヴィラ=ロボスの曲の黒鳥と、ペルナンブーコの曲の黒鳥は、はたして同じ種類の鳥なのか?
ビートルズのブラックバードと、バイバイブラックバードが同一かどうか問題の、第二弾である。

Heitor Villa-Lobos – O Canto do Cisne Negro
ヴィラ=ロボスの曲のポルトガル語の曲名は、”O canto do cisne negro”である。
シスネはハクチョウつまりスワンだから、シスネ・ネグロはブラック・スワン、コクチョウである。
ブラジルの先住民が黒鳥を見る機会などなかっただろうから、ブラジル民謡由来ではないと思うが、ヴィラ=ロボスがどこかで黒鳥を見たのか、あるいは「白鳥の湖」か何か他の作品から引用したのかどうかはわからない。

Black swan - 黒鳥の歌

Black swan – 黒鳥の歌


全身が真っ黒で赤いくちばしを持つ、白鳥と同じ形と大きさの水鳥である。
ふつうは動物園や公園でしか見られないものだろう。
カモ目カモ科ハクチョウ属のオーストラリアの固有種であるという。
ハクチョウ属ということは、同属の白鳥との間に種間雑種が生まれると思うのだが、そうすると当然、「灰鳥」となるのだろうが、両種の自然の生息地に全く接点がないからか、灰鳥なぞ全く聞いたことがない。

João Pernambuco – Graúna
ブラジルの独特な音楽ジャンル、ショーロであるペルナンブーコの曲名にシスネはない。
そのかわりに見つかった曲名が、”Graúna”である。

Pássaro-preto (Graúna) - 黒鳥

Pássaro-preto (Graúna) – 黒鳥


グラウナはブラジルの先住民の言語の一つトゥピ語で、文字通り「黒い鳥」という意味と書いてある。
学名は”Gnorimopsar chopi”、おっこれは先の本ブログ記事の、ブラジルのブラックバード、ポルトガル語ならばパサロ・プレト(pássaro-preto)と呼ばれる鳥のことでないか。
和名は「ミゾハシクロムクドリモドキ」多分「溝嘴黒椋鳥擬」という漢字を当てるのであろう。
ムクドリモドキという名前を持つところから、大きさはムクドリくらいで、オーストラリアの黒鳥よりはだいぶ小さい。
湖上を泳ぐこともない。

19世紀から20世紀にかけての同時代に活躍したブラジルの二人の作曲家が別々に作った、漢字では「黒鳥」の曲であっても、実は異なる種類の鳥を指していたのだった。

知っている人だったら当然なのかもしれないが、これは新鮮な驚きだった。
ブラックバードは実に奥が深いというか、なかなか複雑なのである。

ブラックバード、あるいは黒鳥(くろどり)の仲間たち

カラスとか九官鳥なんかも黒いぞ、という声があるだろうが、この仲間たちは音楽関係から派生したということで、「かーらーすー、なぜ鳴くのー」とかもあるのだが、今回はこれだけに限っておこう。

原語名 和名 学名 関連曲
Common blackbird
(代表して英)
クロウタドリ
黒歌鳥
Turdus merula ブラックバード
(ビートルズ)
New world blackbird (米) ムクドリモドキ
椋鳥擬
多数の属 バイバイブラックバード
Pássaro-preto
Graúna(伯)
ミゾハシクロムクドリモドキ
溝嘴黒椋鳥擬
Gnorimopsar chopi 黒鳥
(ペルナンブーコ)
Black swan
(豪)
コクチョウ
黒鳥
Cygnus atratus 黒鳥の歌
(ヴィラ=ロボス)

Common blackbird - ブラックバード

Common blackbird – ブラックバード


New world blackbird - バイバイブラックバード

New world blackbird – バイバイブラックバード