W杯間近のリオやサンパウロに山猫出没

ブラジルにいる野生ネコ科は、gato-do-mato、直訳すると森ネコという小型のから、オセロット(en. ocelot)という名で知られる少し大きいjaguatirica、大きい方になるとsuçuaranaススアラナ(=ピューマ en. cougar/puma)とかonçaオンサ(=ジャガー en. jaguar)といった大型のまで全8種あるという。
リオやサンパウロに出没するのは、野生のものではない。

山猫スト、辞書には、「労働組合の一部の組合員が、中央指導部の承認なしに行うストライキ。山猫争議。」と書いてある。
山猫というと、宮沢賢治の「注文の多い料理店」を想像してしまい、山猫ストの語源は日本語の童話的悪者のイメージかと思ったりするのだが、goo辞書をみると、英語でも”a wildcat [an unofficial] strike”となっている。
ワイルドキャット・ストライク?山猫の一撃なのか。
ピューマやジャガーの一撃は強烈だろうが、ブラジルの野生ネコも、ツシマヤマネコやイリオモテヤマネコのような日本の野生ネコも、ストライキなどは打ちそうな顔をしていない。

最近の日本ではストライキ自体が珍しいものになっている。
はるか昔国鉄時代には、電車車体に下手な文字でスローガンを書きなぐった醜い電車の画面がテレビニュースに流れたものだった。
ある日突然教室に先生が来ない。
別の先生がやって来て「今日は〇〇先生用事で欠席なので自習」なんて言うと、喜び騒ぐ大勢の声の中に、「〇〇先生は日教組なんだ」と知ったかぶりしている子が言ったりしたものだ。

ブラジルの労働組合は職種単位である。
バスの場合は運転手・車掌(cobradorつまり金を集収する人)が地域で労働組合を結成する。
通常毎年一回決まった月に、雇用者の組合(sindicato de empresas)と労働者の組合(sindicato de trabalhadores)が団体交渉をして、単なるインフレ補填だったり実質ベースアップだったりするがその年の給料調整とか、福利厚生の現状維持か拡充とか、従業員の利益参加つまり業績ボーナスとか、その他労働契約に関連した事項に合意して労働協約を結ぶ。

労働者側の要求と雇用者側の回答が極めて遠く交渉が難航して、労働省(Ministério do Trabalho)の調停も功を奏しないと、労働組合はストライキを打つことがある。
これは労働者の権利、今調べたら団体行動権である。
しかし、ストライキに入る前に予告するとか、公共サービス部門ではストライキ中でも最低限のサービスを保証するとか、いろいろな条件が付けられる。
ストライキが不正な疑いがあると、雇用者側や市民保護局(Defensoria Pública)などが労働裁判所(Justiça do Trabalho)に訴え、ストが非合法である裁定が出ると、スト終結まで労働組合へ一日あたり5万レアル(金額は単なる例)とかの罰金を科すことがある。
あくまでも雇用者組合と労働者組合の二極の対立が想定されている。

最近のリオとサンパウロのバスのストライキは二極対立ではない。
両都市のストライキに共通してみられるのは、雇用者組合と労働者組合が合意に達してあとは労働協約を成文化するだけと、普通ならここで一件落着となる段階で、合意内容に不満がある労働者の一部が、組合の方針から全く離れて勝手なストライキを実行したことである。

不満労働者は、労働組合指導部が勝手に総会を一日早めて我々の参加なしに雇用者側と合意してしまった、という言い分で、労働組合指導部は、正規な手続で開催した総会で組合員7千人の参加をみた承認である、と反論している。

サンパウロ市の労使交渉の場合、給料調整10%で合意していたのだが、不満労働者は給料調整40%と、食事代補助チケットの金額の増額その他を求めて労使合意に反抗、社会に全く予告することなくストライキ入りした。
先般リオデジャネイロで起きたバスのストライキも同様な構図だ。

雇用者組合と労働者組合の対立であったなら、労働裁判所は非のあった方、つまりこの場合であったら予告なしにスト入りした労働側を罰するのであるが、今回のストライキでは当事者の特定ができないので、罰する相手がいない。
現在のところ警察がストライキ主導者の特定にかかっている。

リオは既に終結しているが、サンパウロ市の場合は労働裁判所が48時間後の職場復帰を命じているため、スト3日目にあたる5月22日ストライキは終結しているはずだ。
22日昼、労働省で労使調停が行われている。
一度合意に達した交渉の調停が行われているというのもおかしな話で、労働側の誰が交渉の場に臨んでいるのかもニュースをみただけではよくわからなかった。
調停不調の場合は、労働裁判所が裁定を下す次の段階に達する。

このようなワールドカップブラジル大会間際を狙ったストライキ作戦、先のペルナンブコ州の軍警察官ストライキがそのタイミングを狙ってきたかどうかは不明だが、きっといろいろな分野で頻発することと思う。
一昨日ニュースで言っていたように、バス運転手・車掌の山猫ストによるサンパウロ市の渋滞総キロ数が二百数十キロの新記録とかで、そうなると市内バスを使わないW杯サポーター観光客への影響も少なくない。
今回のバスストでは、組合指導部に従わない山猫と、組合指導部と同意見の家猫?の対立による暴力沙汰や、バスが止まっているので腹を立てた荒っぽい一般乗客が投石や放火をしていないだけマシであるが、こういう事態に慣れていない外国人観光客が騒ぎに巻き込まれたら、国内事件では収まらない。

くれぐれも山猫に調理されて食べられないように気をつけてほしい。

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