コンフェデ杯の影にもう一つのブラジル

発端はサンパウロ市の、市内バス代の値上げに対する抗議だった。
当初の抗議対象はそれだけだった。

デモ隊の一部が尖鋭化して破壊行為に走ったことから、警察隊との暴力を伴う対立に激化した。
デモ隊の過激分子は、警察隊へ石や火炎瓶を投げるだけでなく、街かどの建物のガラスや、地下鉄などの施設を破壊したり、道路上で物を燃やす騒擾活動を行った。
警察隊は唐辛子スプレー、催涙ガス、ゴム弾などで弾圧を試みた。
破壊の張本人は逮捕され、双方にけが人が出た。

続いて、デモの質・量の変化が起きた。
プロテスト内容は、バス代値上げに留まらなくなった。
社会現状への不満のあれこれ、つまり発端となったバス代値上げを含む公共交通の不備、社会保障、教育その他社会資本の不足、貧富の絶望的な格差、重税のくせに見返りのない税制度、現体制の汚職や司法制度の欠陥による犯罪処罰の欠如への不満まで対象は広がっている。

そのおり、コンフェデレーションズカップが始まった。
デモ隊は、さまざまな社会不備が手付かずにもかかわらず、ブラジル政府がコンフェデレーションズカップや来年のワールドカップに大金をつぎ込んでいることを批判する。

そして、サンパウロのデモ隊弾圧に反発して各地で起こっている協調デモは、他の会場都市に飛び火している。
抗議デモ活動が最も尖鋭化したサンパウロ市は、コンフェデレーションズカップの会場になっていない。
現在(2013年6月17日夜)デモ隊がブラジル国会(Congresso Nacional)の屋上に登り、平和的占拠を行なっているブラジリアは、ブラジル-日本の開幕戦のみなので、もう大会スケジュールは終了している。

きょうナイジェリア-タヒチ戦(結果は6-1)のあった、ミナス・ジェライス州の州都ベロ・オリゾンテ(Belo Horizonte)では、ワールドカップへの浪費に反対するデモ隊が、試合時間前に会場であるミネイロン(Mineirão)スタジアムへ向かおうとして、警官隊と衝突した。
大きな混乱はなかったようなのが幸いだ。

サンパウロでは、パウリスタやファリア・リマ、ピニェイロスなどの市内の重要道路でのデモが展開するため、車の通行ができなくなる。
リオデジャネイロでは、抗議デモ参加者の中のほんの一部の暴力分子が道路で物を燃やしたり、州議会の建物へ侵入している。
ベロオリゾンテでは、デモ隊はコンフェデ杯会場スタジアムをめざした。
ブラジルセレソン(代表チーム)があさってのメキシコ戦に備える、セアラ州の州都フォルタレザ(Fortaleza)では、デモ隊はセレソン滞在のホテル前で気勢を上げた。
これは文句をいう相手がお門違いのような気がするが。

各州政府は、その管轄する警察に、デモ隊規制にゴム弾を使用しないことを申し渡した。
サンパウロ市のように、デモ隊組織と警察の間に「紳士協定」が結ばれた都市もある。
Dilma共和国大統領は、暴力に訴えない平和的抗議デモは適法で国民の権利であることを改めて表明した。
どこでも精一杯最悪の事態を避けようとする努力がみられる。

この一連の抗議デモ活動が、コンフェデ杯報道に湧く世界のメディアに、どれだけ露出しているのかはよくわからない。
しかし、ワールドカップ本番まで1年をきった今日、大会の警備体制をみなおすきっかけになることは間違いない。

ワールドカップ2014ブラジル大会のスローガンは、 「みんな一つのリズム」である。
しかし全国民が大会バンザイとなびく、みんな右を向けの挙国一致体制とはおよそ正反対の、意見が対立しあい、まとまらないブラジルであり続けるであろう。
抗議活動が過熱して暴力に流れることは戒めなければならないが、国外の評価を気にするあまり、警察力や体制側の強権弾圧にエスカレートすることのないよう、ブラジルの良識はその名誉にかけて見守っていかなければならない。

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コンフェデ杯の影にもう一つのブラジル」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: 戒厳下のW杯となっても大丈夫 | Caiu o micO

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