ブラジルのアファーマティブ・アクション

最近のこのブログの記事には、かなり裁判の判例ものが多いのだが、今回もそうだ。

画期的な判例が出た。
日本では絶対出ない判例だ。

2012年4月26日に、ブラジルの連邦最高裁判所(Supremo Tribunal Federal)は、公立大学の人種割当(cotas raciais)は合憲であると、10人の判事全会一致で決定した。

訴状の報告者(relator)、Ricardo Lewandowski判事は、現在野党である政党Democratas(DEM)から提出された、首都ブラジリアの連邦大学であるブラジリア大学(Universidade de Brasília – UnB)が、学生定員の20%を黒人の学生に割り当てる人種割当を違憲だとする請求をしりぞけ、人種割当は合憲と結論した。

歴史的な不平等性を超越するために、国家・州はアファーマティブ·アクション-積極的(差別)是正(en. affirmative action, po. ações afirmativas)をもって、ある特定の社会グループに手を差し伸べるのは許されるとする。
ブラジルのような著しく不平等な社会においては、入試に「表面的な一律」基準を杓子定規に当てはめても、現在存在する不平等性を堅固にするか、さらに顕在化してしまうだろう。
Lewandowski判事は、アファーマティブ・アクションは一時的なものであるとの見解を示した。

次いで各判事は意見を述べた。
大半は報告者と同意見であるが、異なった見方もある。

Luiz Fux判事は、割当制を10年継続しているリオデジャネイロ州立大学(UERJ)に寄せられた学生の手紙を披露した。
「(大学の環境は)より民主的、より平等、そして何よりも、よりブラジル風(mais brasileiro)になった」

Rosa Weber判事、この人は女性だが、黒人を取り巻く社会状況と歴史条件により、彼らは白人と同じ機会から遠ざけられている、と述べた。
この不平等を正すために国が介入するのは有効である。

Cármen Lúcia判事(この人も女性)は、アファーマティブ・アクションは最善の策ではない、理想は全員が等しく自由な社会を築くことだ、と述べた。

連邦最高裁判所で現在ただ一人の黒人Joaquim Barbosa判事は、本でこのテーマで意見を発表してから11年たつが、差別によって利益を得る人々がアファーマティブ・アクションに抵抗を示してきた、と述べた。
アファーマティブ・アクションの目的は、差別と戦い、社会に調和と平和をもたらすものだと考える。

Gilmar Mendes判事は、人種割当違憲請求については棄却したが、ブラジリア大学の是正法に注文をつけた。
いわゆる「人種裁判所」(tribunais raciais)、学生が黒人かどうか判定する委員会がときどき誤判定をくだすことがあり、兄弟が異なる人種に判定された例をあげた。
社会経済的ひずみを許すことから、人種のみによる基準に疑問を呈した。
なぜなら、単純に人種から判断して割当すると、経済的に豊かで教育機会に恵まれる黒人が相対的に優遇されるからだ。

歴史的な人種にまつわる不平等とは、言うまでもなく奴隷制度(escravidão)である。

黄金法と訳せようか、Lei Áurea つまり(ブラジル)帝国法3,353号(Lei Imperial n.º 3.353)が承認されたのは、1888年5月13日のことだった。
たった2条の法律だ。

第1条 この法発行の日をもって、ブラジルの奴隷制は消滅する。
第2条 この法に反する諸条例は無効となる。

極めてすっきりと直接的な法律で実現した奴隷制廃止(abolição)であったが、現実はすっきりとはいかず、124年経った現在でも、まだいろいろな傷跡は残っている。

黒人は高給な職をみつけにくい。
職をみつけても、黒人の給料は白人の給料より少ない。
黒人は出世できない。
だから黒人は貧しい。
子供の教育に金をかけられない。
だから私立高校は無理で、公立高校に行くしかない。
公立高校は、州や市に金がないので設備が不十分で、二部制や三部制で授業時間がただでさえ短い上に、教師が薄給のため頻繁にストをするので、設備が良く全日制の私立には教育の質が追いつかない。
そのため、授業料は無料だが入試が難しい公立大学には入れず、私立大学は授業料が高い、下手すると家庭の都合で中等過程(ensino médio)も基礎課程(ensino fundamental)も卒業できない、さらに転んでしまうと、犯罪の世界に引きこまれてしまう。
(最初に戻る)

黒人で金持ちになるにはサッカー選手かミュージシャンになるしかない、などと昔はよく言われた。
現在は公立大学へ行く道がひらけてきたのだ。

人種による割当とは、一般の受験生枠と独立して黒人だけの受験生枠があって、たとえばブラジリア大学だとこれが全定員の20%なのだが、黒人受験生は黒人受験生だけの割当枠の中で合格を競うわけだ。

今回の最高裁の判例はアファーマティブ・アクションの中でも、人種による割当という方法だが、実はほかにもアファーマティブ・アクションの方法はある。

公立高校学生割当というのがある。
これは人種は問わず、公立高校の学生に大学の定員割当を設けて、公立高校学生同士で合格を競う。

黒人とか公立学校学生とかに定員の割当を設ける方法のほかに、黒人や公立学校学生は一般入試と同じ枠を争うのだが、点数に下駄を履かせる、という方法もある。
ゴルフのハンディキャップ制のようなものだ。

なお通常、大学入試の黒人割当には先住民(índioあるいはindígena)も含まれる。

最後に明らかにしておく。

至極当然のことだが、入試に関しては優遇措置があっても、大学に入ってからは他の入試方法で入った学生と一緒に勉強し、同一の試験を受けて同一の点数で単位取得をしていく。

入学が難しくても卒業が比較的簡単な日本の大学だったら、割当を利用して簡単に大学に入ったらもう目標達成で安泰、ということになろうが、ブラジルの大学は単位をとって進級して卒業に到達するのはなかなか大変なのだ。
そういう意味では、卒業にたどりつくまで同じふるいを通るので、黒人と白人の間に、公平さは保たれることになっているのだ。

(STF julga constitucionais as cotas raciais em universidades
iG São Paulo | 26/04/2012 10:23:23 – Atualizada às 26/04/2012 20:23:23
http://ultimosegundo.ig.com.br/educacao/2012-04-26/supremo-retoma-julgamento-das-cotas-raciais-nesta-quinta.htmlを参考)

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トキソプラズマにあやつられるブラジル人

日経ビジネスオンライン
ネコが人を元気にする科学的な根拠
寄生虫のなせる技?
石 弘之 2012年4月16日(月)
を読んだ。

猫に寄生する原虫トキソプラズマがネズミに感染すると、ネズミの行動が変わってネコに食べられやすくなるというのだ。
寄生されたネズミは、脳内物質のドーパミンが多量に分泌されて「威勢がよくなり」ネコを恐れなくなるという説だ。

トキソプラズマに寄生されて威勢がよくなるのは、ネズミだけではない、人間も同様なのだという。

ドーパミンは最近よく聞く言葉だが、快感や感動したときに脳内で放出される物質だ。
興奮するだけでなく、行動を起こす動機づけ効果があることもわかってきた。
「やる気が出る」ドーパミンである。

トキソプラズマに感染した人は、世界人口の3分の1と推測されている。
結構多いものだ。
感染率は地域により差があり、韓国は6%にすぎないが、ガーナは92%と高い。
日本は20-30%とされており、世界平均より少し少ない。

スタンフォード大学のパトリック・ハウス博士は、ワールドカップ2010南アフリカ大会の成績と、国民のトキソプラズマ感染率との関連を調べた。
サッカーの強さとトキソプラズマ感染率とには相関関係があるという。

FIFAのランキングトップ25ヶ国を感染率で並べ替えると、上位からブラジル(感染率67%)、アルゼンチン(52%)、フランス(45%)、スペイン(44%)、ドイツ(43%)となり、このなかには過去10回のワールドカップの優勝国がすべて含まれている。
イギリスやイタリアは、例外的にトキソプラズマ感染率が低いサッカー強国という。

ハウス博士は、トキソプラズマに感染すると男性ホルモンのテストステロンの分泌が増えるので、積極的、攻撃的になってこれがサッカーを強くするというのだ。

そうか、ブラジルは3人中2人はトキソプラズマに感染して、男性ホルモン満々なのか。
ネコが広く飼われているという感じはしないのだが、シュラスコ(po. churrasco バーベキュー)でがつがつと生焼けの肉を食べることが多いから、トキソプラズマが広がりやすいのだろう。

ラテンアメリカはmachismo「マッチョな気風」があるというのも、トキソプラズマのせいなのか。
トキソプラズマのせいで、女性もなかば男性化して、社会進出も進んでくるのだろうか。
ジルマ・ルセフ(Dilma Vana Rousseff)大統領(ブラジル初女性大統領)も、トキソプラズマを持っているのだろうか。

ブラジルがサッカーが強くなるのは良いが、ネコを恐れなくなるネズミならぬ、交通事故を恐れぬ運転者とか、警察を恐れぬ犯罪者とか、汚職買収を恐れぬ政治家とか、税務署を恐れぬ企業家とか、危ない人間が多いのはトキソプラズマのせいにして良いのだろうか。

2010年のブラジル交通事故死は40,610という恐るべき数であった。
また、ブラジルの殺人数は実数で世界一、2009年に43,909人だった。
総人口(分母)が多いから死亡数(分子)も大きくて当然だが、ブラジルはいいところだと吹聴したい私は、あまり良い気はしない。

元記事に戻る。
カリフォルニア大学サンタバーバラ校のケビン・ラファティ博士のように、ネコからのトキソプラズマ感染は、人の探求心や知的好奇心を形成した重要な要素であり、人をより人らしくした、と主張する研究者もいる。

ブラジルにとっては救いだ。
しかし、この説にならうと、ガーナは人間らしさ満点の国で、韓国は人でなしの国ということになってしまうが、これでいいのか?

カトリック社会における妊娠中絶

2012年4月12日連邦最高裁判所(Supremo Tribunal Federal)は、無脳症(po. anencefalia, en. anencephaly)の胎児の妊娠中絶(interrupção da gravidez)を認める決定をした。

無脳症の胎児は、頭蓋骨上部が発達せず、脳の大半が欠けているので、誕生しても通常数時間で死亡する。

この裁決の出るまでは、胎児に脳がないことが判明して、中絶を希望する妊婦は、複数の医師の診断書をもって裁判所に訴え出て、その裁決を待たなければならなかった。
判事によってこの裁決にかかる時間は大きく異なって、72時間で判決が出ることもあれば、数ヶ月もかかることもあった。
今回の最高裁の判決により、妊婦は診断があれば司法に訴える必要なく、合法に妊娠中絶できるようになった。

カトリック教会は、妊娠中絶には反対の意見を表明していた。
大多数の国民がカトリックで、教会が世論結成に大きな力を占めるブラジルで、中絶が合法に認められる第3の例となった。
他の2例とは、強姦によって妊娠した場合と、妊娠の継続が母体に危険を及ぼす場合である。

最高裁の無脳症胎児妊娠中絶合法裁定を受け、連邦医学審議会(Conselho Federal de Medicina)は、胎児の無脳症診断の新しい基準を審議する委員会の開設をこの13日に発表した。

(Globo Jornal Hoje Edição do dia 13/04/2012 13/04/2012 13h56 – Atualizado em 13/04/2012 13h59
http://g1.globo.com/jornal-hoje/noticia/2012/04/conselho-de-medicina-cria-comissao-para-redefinir-criterios-d-anencefalia.htmlを参考)

ところで最近隣国アルゼンチンで、レイプによって妊娠した女性の中絶請求が当国の最高裁に認められた例があった。

(レイプ被害者の中絶容認 アルゼンチン
2012.3.14 10:09 [南北アメリカ]
http://sankei.jp.msn.com/world/news/120314/amr12031410110001-n1.htm)
記事によると、アルゼンチン最高裁は13日、レイプ被害者の人工妊娠中絶を認める初の判断を示した。

ということは、同じカトリック社会でも、ブラジルはアルゼンチンと比較して、妊娠中絶が認められるケースが多少広いということになるのか。
強姦被害者の望まない妊娠中絶は、ブラジルでは既に認められていたからだ。

他のニュースで触れていたが、妊娠期にビタミンBの一種、葉酸(ácido fólico)の摂取によって無脳症を減らすことができるという。
保健所などが医学知見に基づいて、妊婦に食事栄養指導することによって障害を減少することができるなら、この方面に力を入れてほしいものだ。

さようなら、すなのみよ

久しぶりにすなのみ(砂蚤)が足に入った。
ポルトガル語ではビショ・ジ・ペー(bicho-de-pé)、意味は「足の虫」と、そのまんまの名前だ。

数日前から右足の中指の先が、かさかさした感じだったので見ると、血豆ができたように見えた。
どこかで指先を踏んづけたかしら、でもいつどこで?
と放っておいたが、金曜日の夜になってむずむずしてきた。

よく見たらすなのみだった。
見たかったらクリック
この写真の中心先端の黒点が尻に相当して、これを通じて呼吸している異生物が皮下組織に食い込んでいて、血流から栄養を奪って繁殖の機会をうかがっているという、あの映画エイリアンのごく小型版という感じである。
まああの不幸な宇宙船の乗組員や、寄生蜂に卵を産み付けられて体内で無数の幼虫を養わされるアオムシのような悲惨な目には合わないけれど、寄生された生物の惨めさの片鱗を感じることができる。
知性はないし体も小さいけれど、この皮膚を透けて見えるところに邪悪な異生物がいるのだと大げさに考えると、身震いしないか。

エイリアンやコマユバチのことは忘れて、すなのみにもっと早く気づいていたら、こんなに大きくなる前に取り除くことができただろう。
翌日まであと一晩「飼ってやって」から、昼の明るいところで皮膚を切開、すなのみ取り出しをしようと思ったのだが、妻が今取るのだといってきかない。
だから金曜日の夜に、妻が除去手術(というほど大げさなものだろうか?)を実施した。
器具は消毒した縫い針一本で、時間は5分か10分くらいかかっただろうか。

組み写真で実況も考えたが、気持ち悪いし、照明状態も良くないのでやめにした。すなのみを除去した痕の穴ぼこはこうなった
気持ち悪いの嫌いな向きはクリックしないで。

いつどこですなのみを拾ったのだろうか。
鶏小屋に草履で入ったときだろうか、草ぼうぼうの中を歩きまわったときか、鶏ふんの山のそばを通ったときだろうか。

何回かすなのみに取りつかれた経験では、どちらかと言うと乾燥した気候のときに、鶏ふんや豚ふんなどの有機物のあるところを、裸足や草履で歩くとすなのみが足につきやすいと思う。
長いパンツと長靴で装備していれば、とりつかれる可能性は非常に低いだろう。
しかし、すなのみはノミ(po. pulga)の仲間、20cmくらいはジャンプするという。
ジャンプして長靴の中に飛び込むこともありそうだ。

最近調べたら3.5cmくらいしかジャンプできないらしい。
ということは普通の靴を履いていれば大丈夫だろう。

普通すなのみはそのポルトガル語名から察するように、足の指や裏に入ることが多いのだが、ネット検索したら、ペニスに入られた気の毒な人の話があった(日本語で読める-google「すなのみ デンゲ」でトップに出るはず)。
これを病院でとってもらうくだりは、本当かいなと思われるほど面白い。
取り出すためになんと、勃起しなければならなかったという。
人ごとだと笑っていられるのだが、本人は大変だったろうと同情する。

田舎で聞いてみたら、旦那の尻に7匹ばかり、おちんちんに一匹入ったので全部とってやった、という女性がいた。
勃起させたとは言っていなかった。
いきなりひんむいたというので、さぞかし痛かったことだろう。

かなり多くの人が、すなのみが足に入ると、「このむず痒いのが気持ち良い」といってすぐに取らないで、かゆみを楽しむ?ようである。
この熱帯医学データベースを読んでみると、ブラジル人のようにのんきに「飼って」いて良いのか気になる。
詳しく知りたい人はWikipedia(英語)を見てほしい。
Wikipedia「スナノミ」日本語ページができていた。

ブラジルに、とくに田園地帯に住みたいという人のために言っておくと、破傷風(tétano)の予防注射はしておきたい。
車によく乗る人は、交通事故でけがをしたときに、破傷風の接種が済んでいたら安心だから、都会の人にも予防になる。
ブラジルの保健所に行けば、無料で注射してくれる。
確か0-30-180日の3回接種だったと思う。

受難劇で起きたユダ役俳優の災難

明日4月8日は2012年の復活祭日曜日、昨日金曜日に十字架にかけられたイエス・キリストがよみがえった日である。

現代の聖土曜日(sábado santoあるいはsábado de Aleluia)、つまり、過ぎた今日は、前日まで肉食を断ってきた人々が久しぶりに肉にありつけるとあって、静けさにあふれた祭日であった受難金曜日から一夜明けると、街中がそわそわした賑やかさに包まれていた。
近所の家から焼肉(churrasco)の、炭と肉の匂いが漂ってくる。
そんな日に目にしたニュースだ。

カトリック主流のブラジルでは、聖週間に各地でキリスト受難劇が催される。
規模の大きさで有名なのが、ペルナンブコ州ブレジョ・ダ・マドレ・デ・デウス(Brejo da Madre de Deus – PE)は、地区全体がエルサレムを模した屋外舞台装置になっていて、俳優・スタッフ千五百人の大仕掛けな受難劇が行われ、一夜一万人もの観客を集める。

サンパウロ州イタラレ(Itararé)で、昨日受難金曜日のできごとだった。
受難劇の俳優が、誤って首が絞まって重体になるという事故があった。

俳優Thiago Klimeck氏は、小道具の縄の結び目を誤って自分の首にかけ絞めて飛び降りてしまった。
彼はイスカリオテのユダを演じていた。

俳優チアゴは、石のように静止する場面だったが、4分間目を覚まさなかった。
他の俳優たちは全く気づかなかった。
というのも、死んだふりをする場面だったからだ。

救急隊に救われたチアゴはすぐに入院したが、容態は重体のままで、土曜日の朝より大きな病院に移送された。
主を売り渡した自分の行いを恥じた、イスカリオテのユダは、確か土曜日に命を断つことになっていた。
俳優チアゴには、ユダの後を追わずに、無事助かってほしいものだ。

(http://estadao.br.msn.com/ultimas-noticias/ator-se-enforca-acidentalmente-em-encena%C3%A7%C3%A3o-da-paix%C3%A3oから)

2012年4月23日追加

http://ultimosegundo.ig.com.br/brasil/sp/2012-04-23/corpo-de-ator-que-interpretou-judas-sera-enterrado-nesta-tarde-e.html
によると、俳優チアゴは17日間の意識不明の後、4月22日に死亡した。
R.I.P.

本当の美容整形大国はどこか

日経ビジネスONLINE
北村豊の「中国・キタムラリポート」
美容整形による容貌の破壊・変形が10年間で20万件
世界第3位の整形美容大国となった中国の悲しむべき実態
2012年3月30日(金)
というのを読んだ。

中国が世界第3位の整形美容大国なんて嘘だろ、そんなわけがない、ブラジルはどうした?というので調べてみた。

人口データは、
United Nations – Department of Economic and Social Affairs – Population Divisionによる、
http://esa.un.org/unpd/wpp/Documentation/publications.htm
にある、
http://esa.un.org/unpd/wpp/Documentation/pdf/WPP2010_Volume-I_Comprehensive-Tables.pdf (6.41MB)
を使った。
2011年の推計値である。

整形手術や手術以外の処置(procedure)のデータは、
International Society of Aesthetic Plastic Surgeryの
http://www.isaps.org/files/html-contents/ISAPS-Procedures-Study-Results-2011.pdf (162KB)
から取り出した。
2010年に実施された手術・処置数である。

手術・処置数の実数順位と、単位人口あたり手術・処置数順位の、それぞれトップテンを並べてみよう。

整形件数(千件) 千人当たり整形件数
米国 3,314 韓国 16.06
ブラジル 2,518 ギリシャ 14.45
中国 1,265 イタリア 13.38
日本 1,183 ブラジル 12.78
インド 1,147 米国 10.59
メキシコ 917 コロンビア 10.49
イタリア 816 日本 9.39
韓国 771 フランス 8.11
フランス 511 メキシコ 7.97
コロンビア 493 カナダ 7.53

注意
国際美容外科学会(ISAPS)の整形手術・処置件数は、上位25ヶ国しか発表されていないので、人口の極めて小さな国で、人口に対して手術・処置数が多いのだが、実数で25ヶ国に入らない国がランクインしていない可能性がある。
たとえば、日本人が韓国で美容整形手術を受けた場合には、韓国でカウントされると思われるので、そのようなケースが多いとデータに歪がでる可能性がある。

思った通りだ。
千人当たり美容整形件数では、中国はトップテン圏外のずっと底の方、0.94件で、インドの一つ上の第23位にすぎない。

千人当たり美容整形件数順位を見ると、なかなか面白いことが想像できる。

韓国が美容整形大国であるというのは疑いのない事実である。

ギリシャとイタリアがそれに続いているのにあえて意味を見出そうとすると、ギリシャ神話やローマ神話の神々の肉体美へのあこがれがあるのだろうか。
彫刻の神像は理想的肉体美を追求しているから、実際の肉体にも、ノミならずメスを入れたくなるのだろうか。
国庫は傾いていても、整形にかける情熱は熱いようだ。

ブラジルは4位でUSAをしのぐ美容整形好きな国民であることが証明された。
ラテン系では3位イタリア、4位ブラジル、6位コロンビア、8位フランス、9位メキシコ、11位ベネズエラ、13位スペインと、存在感は大きく、ラテン系の美にかける執念というか、ただモテたいだけかわからないが、健闘している。

日本の7位ランクインというのは、慎ましく淡白な国民性という先入観を覆し、なかなか頑張っているといえよう。

2012年4月26日追加

ISAPS International Survey on Aesthetic/Cosmetic Procedures Performed in 2010の調査方法の訳抜粋(一部省略あり)をのせる。

調査の参加者は、主に2010年に実施した手術・非手術処置数を問う、英語2ページの質問票を受け取った。
ISAPSは、データベースにある約2万人の整形外科医に調査参加を依頼した。
さらに、すべての国単位の協会に対し、その会員に調査に参加してくれるよう協力を求めた。

集計時までに698票の質問票が届いた。

最終の数字は、各国の整形外科医数と回答サンプルをベースに、国際統計を反映するよう投射(project)した。

世界中の整形外科医数を推定するため、各国の協会が提供してくれた数字は、33,000とみられる整形外科医数の90%以上をカバーしている。
ある国の、協会によるその国の医師総数が得られなかった場合には、その国の人口とGDPを基に回帰方程式を使って求めた。

ある国の回答数が不十分であった場合には、投射にはその国の属する大陸の回答を参考にした。
その国の回答を強調するために、重み付けの方法を採用した。

サンプル数及びそれぞれの回答の分散に依存して、処置により、また国により信頼区間は変化するものの、95%信頼水準で、標準誤差は3.67%に収まった。

当(The International Survey on Aesthetic/Cosmetic Procedures Performed in 2010)調査は、オハイオ州Columbus所在の独立調査機関Industry Insights, Inc. (www.industryinsights.com)によって集計分析された。
調査リーダーは、15年にわたって整形外科手術のトレンド調査に従事しているScott Hackworth公認会計士であった。

復活祭のシンボルたち

昔英語の時間だったか、欧米ではイースターには絵の具できれいに塗り飾った卵をいろいろなところへ隠して、子供たちはそれを探すのを楽しみにしている、という話を聞いたように思う。

ブラジルで復活祭(po. páscoa, es. pascua)のシンボルというと、なんといってもウサギと卵である。
ブラジルの復活祭卵は、ペイントしたニワトリの卵ではなく、チョコレートでできている。
大きさも鶏卵大どころではなく、大きなものは長径30センチメートル以上もある。
普通は中空で、お楽しみとして中に別の小さなチョコレートが入っていたりする。
おまけのおもちゃなどが入っていて、その分値段を釣り上げる製品もある。

ブラジルには、バレンタインデーにチョコレートを贈る習慣はない。
でもブラジルの菓子製造業にとって、チョコレートを売りまくる強い味方が、復活祭の卵チョコレートなのだ。
日本のお年玉みたいなもので、親戚中の子供に卵チョコレートをプレゼントする人は多い。

手元にあるフランス系スーパーCarrefourのチラシを見ると、卵チョコレートは350g級が19.90レアル、750g級が49.90レアルとなっている。
同じチラシで、普通の150gくらいの板チョコが3.99レアルなので、形が卵形をしていて、きれいに包装されているというだけで重量単価が2倍以上に跳ね上がる。
いくつも買う人には、結構な出費になる。

でもなぜウサギと卵なのだろうか。

両方とも繁殖力、生命力の象徴と言われているが、ウサギは卵を産まない。
この2つは結びついているのか、全く関係ないのか、これまでわからなかったのだが、きょう次の記事を見た。
クレジットカード請求書と同封されたパンフレットに書いてあったものだ。
出典や署名はない。
信じて良いかどうかわからないが、ウサギと卵の関係が初めて説明されたので書いておこう。

復活祭の起源と意味はひとつだけではない。
長い歴史の中で、異なる文明に触れてきた。
その中でブラジルには、いろいろなシンボルが生まれ親しまれてきた。

復活祭には3つのバージョンがある。

まずキリスト教、イエス・キリスト(Jesus Cristo ジェズス・クリストと読む)の復活である。
そしてユダヤ教、エジプト隷属からの解放と約束の地との邂逅を祝う。
それから収穫と豊穣を司る春の女神の祭典としての行事だ。
今日ブラジルで知られるシンボルである、ウサギ、卵、チョコレートとタラはこれらの文化の産物である。

タラはキリスト教文化から導入された。
カトリックは復活祭の前のある期間に「温血の」肉食を断つことを信徒に求めた。
タラは「冷血の」肉であると考えられたから、ポルトガル人たちはこの期間中、肉に代わるものとして好んで消費してきた。
ポルトガル人たちは、この習慣を植民地であったブラジルへ持ち込んだ。
ブラジルの多くの地方で、肉食を避ける聖金曜日に肉、つまりメインディッシュの代わりとして食される。
しかし、復活祭当日のごちそうとして魚のメニューを用意するのが習慣になっている家族や地方もある。

アングロサクソンの多神教(po. paganismo, en. paganism)に起源を持つ、OsteraあるいはEostreはゲルマン神話の春の女神であり、ウサギを抱き、一個の卵を手に持つ。
北半球の復活祭時期が春に重なるところから、同時に祝われるようになったので、これら豊穣のシンボルは、復活祭に取り込まれた。
春と収穫につながる、豊穣のときを祝うために、異教徒たちは魔力のシンボルや金で卵を飾り、地中に埋めたり、かがり火に投げ込んだりした。

神話では、オステラは子供が好きで、彼らを喜ばすために鳥を、子供と一緒に遊んでくれるウサギに変身させた。
しかし、ウサギは元の体に帰りたくなったのだが、オステラの魔法の変身力が戻ってくるのに、次の春まで待たなければならなかった。
時が来て、ウサギを鳥に変身させたとき、鳥は感謝して卵をいくつかさしあげた。
でも変身はいっときのものだったので、またもやウサギになって、卵をきれいに飾って世界中に広めた。

卵形チョコレートは、伝統的なペイントした鶏卵に代わるものにしようとして、フランスの菓子職人たちが導入した。
このすばらしい美味は、今日では世界中で、とりわけブラジルで愛されるようになったのである。

なるほど。
現代のブラジルではオステラが喜ばすのは子供たちだけでなく(もちろん子供たちは喜ぶのだが)、菓子製造業の大人たちをもっと喜ばせているのだ。

後でキーワードOsteraで検索したら、Wikipediaにも鳥とウサギの物語は載っていた。