中国自動車メーカーとブラジル財務省と野党入り乱れ

最近テレビで韓国車・中国車のコマーシャルがよく見られるようになった。

ブラジルのこれまでの自動車のコマーシャルは、乗用車ならばブラジルらしからぬ清潔な街をイケメンがクルマで爽快に走っていたり、軽トラックならば農業国ブラジルらしく一面のサトウキビ畑の中を土煙を巻き上げながらやはりイケメン運転のピックアップが疾走していたり、かなりステレオタイプ映画シーン的なものが多かった。
トヨタ・ホンダ・三菱・日産など日本メーカーのコマーシャルもこの域を出ない。
フィアット、シトロエンなどラテン系メーカーのコマーシャルは、ユーモアが入って変わった味のものがある。

ここへ韓国・中国勢が入ってきたわけだ。
韓国メーカーはコマーシャルの量が多いだけでない。
目をひく明るくポップなコマーシャルは、従来の自動車のコマーシャルに慣れた目には新鮮に映り、バックに流れる音楽はk-popなのだろうか、耳にも軽快に訴える。

韓国メーカーの宣伝のすごさはそれだけではない。
ブラジルのテレビドラマは、ブラジル庶民の生活からかなりかけ離れた富裕階級が舞台になることが多い。
手入れが行き届き緑まぶしい芝の中に広いプールのある庭園、建築意匠を凝らした大邸宅、庶民の住宅の一軒分の広さがある部屋、量産店にはまず見られない、一つが数千レアルしそうな、広大な部屋でないと冴えないデザインの高級家具に囲まれ、登場人物が愛憎物語を繰り広げるのだ。

そんな家にはお抱え運転手の控え室の隣に、その何倍も広いガレージがあって、家族の人数以上の台数の自動車がある。
そういったテレビドラマのスポンサーになって、ドラマの中に韓国車を登場させる。
当然のようにガレージの中の車は全部Kia車だったりするわけだ。
登場人物はドラマの中で車を褒めたり自慢したりするのだ。
物語の筋と全く関係なく、スプリットシートの使い方を延々と説明してくれたこともあった。
なかなか白々しい強引なマーケティングである。

しかしここへ来て風向きが変わりそうなことが起こった。
財務省は2012年12月までの時限付きで、メルコスール([南米]南部共同市場 / Mercosul (po.) / Mercosur (es.))外から輸入する自動車にかかる工業製品税(IPI – Imposto Sobre Produtos Industrializados)の税率を30ポイント上げることを2011年9月15日に発表した。
メルコスール外といっても、ブラジルと独自の協定を持つメキシコからの輸入車は税率上昇から除外される。

目的は輸入車との競争から国内製造車を守ることだとMantega財務相は説明する。
輸入車の半分がこの措置の影響を受けて、25%から28%の価格上昇に直結する。

税率だが、これまで7%だった排気量1リットルまでの車は37%へ、1リットルから2リットルまでの車は11%から41%へ上がる。
乗用車・トラック全て30ポイントの上昇である。

しかし、ブラジル・アルゼンチンで製造された車は、ある条件のもとでIPIの上昇から免れる。
少なくとも65%の部品がメルコスール域内で製造されること、域内に技術的投資を行うことがその条件にあげられる。

こんな保護主義的な手段をとる根拠は、経済危機によって全世界の自動車産業が供給力過剰になって売り先を探しているため、ブラジルに流入する輸入車と国産車の競合が激しくなっていることだ。
ブラジルに世界から完成車の流入が増大して、ブラジルの雇用を外国へ輸出するようになるリスクを負っている、と財務相は説明する。

国内製造業保護については労働省も賛成している。
労働相によると、今年輸入が3倍に増加しているのに、国産車の在庫は増えている。

G20のためにワシントンにいる財務相は、「これは保護政策ではない、ブラジルへの技術投資の推進策だ、どの国の企業にも公平に開かれている。いかなる国に対してもブラジル進出への障壁を設けない。」と述べた。

先週のTVニュースでも指摘されていたが、このIPI上昇で一番影響を被るのは部品国産率が低かったり完成車輸入をしている韓国・中国メーカーと言われる。
以前は輸入車は高級車と決まっていたのだが、最近急速に売上を伸ばしているのは、お買い得感の多い韓国・中国車である。

中国も郷に入っては郷に従うのか、あるいは中国自体がそうなのか、どちらかわからないが、ブラジルの司法を早速動かしている。
さっそくChery(奇瑞)がエスピリト・サント州の連邦裁判所へ訴えて、輸入車のIPI上昇を12月15日までの90日間差し止める予審判決を得た。
新税あるいは増税は、公布から発効まで少なくとも90日経たなければならないルール(noventena)、というのが予審判決理由だ。

財務省検事総局(Procuradoria-Geral da Fazenda Nacional)は連邦裁判所へ、予審判決に対抗する訴訟を起こした。

野党DEM(民主党)は、9月22日に連邦最高裁へ、輸入車のIPI税率上昇は憲法違反との直接請求を起こした。
根拠は90日ルールであるが、DEM総裁José Agripino上院議員は、連邦政府の国内産業保護政策を批判し、競争が妨げられるために自動車価格が上昇して消費者が被害を被るという主張をしている。
立法権まで出てきて三権入り乱れ状態だが、韓国・中国勢の強力なロビー活動があると想像できる。

テレビでは韓国車のディーラーが、在庫のある限り9月30日までは値上げしませんとのコマーシャルを流している。
急に湧いたこの戦いから当分目が離せない。

2011年10月21日追加

2011年10月20日、連邦最高裁(Supremo Tribunal Federal)は、輸入車への工業製品税(IPI)税率増加を停止する判決を出した。
税率増加が有効になるのは2011年12月16日からになる。
最高裁は憲法に定める、いかなる税負担変更も立法後90日を経なければ徴収することができない原則を確認した。
(2011年10月20日 Globo Jornal Nacionalから)

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